第12話
最後の最後まで言葉を濁し、表情筋を引き攣らせた担任は私の求めていた回答を述べてくれる事はなかった。
職員室に教師が増えてきたのを機に、追い出される形でその場を辞した私の脳内は当然、幾多の疑問符で埋め尽くされていた。
「正気の沙汰ではない」気がかりでしかない担任のその言葉が、どうしても胸につっかえる。
寧ろあんな形相であの台詞を吐かれ、何も気にならない人間がいる訳があるまい。
「招待状…。」
口から洩れた一言が、誰もいない廊下を走る。
私の視線の先にある怪しさしかない封筒。それは担任に無理矢理押し付けられた物だった。
耳を塞ぎたくなるまでの執拗さで「希望表を提出しろ」としきりに言っていた担任。
金を取り立てる極道の組員並みの威圧感を放ち、いつまでも空白のままだった私の希望表を見てはあからさまに舌打ちまでしていた。
そんな彼女にとって、私が希望表を提出した事は間違いなく喜ぶべき事であるはずなのに、あの顔はどう頑張って見ても歓喜しているようには映らなかった。
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