第9話
「やっぱり良いね、まさに運命だよね。」
「はい?」
「ううん、何でもない。君の名前がとても素敵だなと思っただけだよ。」
モカブラウンに染められた髪を風に靡かせ、あははっと笑い声を弾ませた相手の美しさに、不覚にも見惚れてしまった。
「時雨」いつだって男の子に間違われてきたその名前を「素敵」だと言われたのは二回目だ。
自分の名前が厭い訳ではない。もう十五年も付き合って来た名前なのだから、それなりに愛着は持っているつもりだ。
でも「素敵」だと率直に言われると、何だか心が擽られる感覚がする。とても嬉しい、全然悪い気はしない。
『時雨って、素敵だね。』いつしか放たれた優しい声が頭を過ったけれど、すぐに隅へと追いやった。
「あ、忘れる所だった、僕の名前は
希望表を持ち踵を返した相手の人が足を止めてこちらを振り返った。
その所作一つとっても実に上品で華麗な人だ。何処の貴族出身ですか。
「生徒会にはあと三人属しているけれど、それは活動する時に紹介するね。それじゃあね…。」
‟時雨ちゃん”
とても聞き心地の良い声をその場に落とした天文さんは、今度こそ私に背を向けて去ってしまった。
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