第8話

「生徒会に入らない?」



その勧誘を持ち掛けた男は、大変 端麗たんれいな顔に聖母顔負けの穏やかな笑みを湛えていた。



生徒会なんて、想像しただけで疲弊する響きである。


当然首を横に振ったのだが、相手はすぐに引いてはくれない。




「とっても楽だし快適だよ。週に3回くらいの活動だし何よりたのしい。活動した後はとても気持ちの良い最高の快感が待ってるよ!」




とっても楽。



相手の放ったその言葉は、魅力以外感じなかった。





生徒会なのに楽?そんな疑念は浮かんだが、希望表の提出期限も差し迫っていた私に、悩み熟考する時間など残されてはいない。



これも何かの縁である。


きっと神様のお達しだ。


人の出逢いは一期一会だ。




己にあったそれっぽい理由を掻き集め必死に言い聞かせた私は、一か八かの賭けでこの男を信じてみる事にした。




「書いた?」


「はい、これで良いですか?」


「うんばっちり。これは部長の僕が預かるね、君の担任にも提出しておくよ。」




一色 時雨いっしき しぐれ。私自ら名前を書いたその用紙をヒラヒラと泳がせながら、親指を立てて優しく目を細めた相手は、見るからに品行方正で紳士な雰囲気を醸し出している。

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