第54話

星利side3

「はあ!?まだザクラ(ちゃん)に告白してない!?」

告白してないことを告げたら、仲間たちはへんなチ-ムワ-クを発揮し、見事にハモった。

「し、仕方ないだろ!

最近いろいろあって、それどころじゃなかったし!」

「まあ、そうだけど!」

またまたハモる。

「星利。ザクラちゃんに言えない気持ちは分かる。

でも、ザクラちゃんの今後が、『あの運命』通りだったらどうするの?」

「うっ・・・」

蘭の死で忘れかけていた。春風に待ち構えている、過酷な運命のことを。

「ザクラが立ち直ったのはいい。でもそれは、ザクラと私たちに残された時間が少なくなっていくことも表している」

「ザクラちゃんがいつ、ウィ-ン・ウォンドと再び対峙するか分からない」

「んなこと、分かってるよ!」

思わず声を荒げてしまう。水神たちはびくっと驚く。

「・・・ごめん」

ハッと我に返り謝罪をする。

「・・・分かってんだよ。俺らと春風に時間がないことも。いつ、そのような事態になるのかも分からねえことも。

だから、後悔しないように想いを伝えなきゃいけねえことも」

ソファーに腰掛け、両手を組み額に当てる。

「蘭が死んで、あいつは立ち直った。

きっとあいつのことだ。無理やりにでも自分を奮い立たせたんだろう。

だからか分からねえけど、あいつがどこかへ行ってしまいそうな気がするんだよ」

ここ数日修行に励むあいつを見て、 そう思っていた。

「・・・星利」

「世界を救う決意をして、あいつは髪まで切ったんだ。

俺の気持ちなんか知って、あいつを戸惑わせたくないというのもある」

「だからといって、気持ちを伝えないままザクラちゃんが死んだら、お前の気持ちはどうなるんだ?」

「 ・・・心の奥底に封じる」

「封じる・・・だと?」

「北斗?」

ふと顔を上げれば、珍しく北斗が怒っていた。

「そんな簡単に気持ちを封じることなんてできないんだよ!」

ぐっと、Tシャツの襟ぐりをつかまえられ、赤味が混じった黒い瞳で睨まれる。

「普通の恋愛さえなかなか失恋から立ち直れないというのに、死ぬかもしれない人への想いなんて、封じきれるわけないだろ!」

そう言った北斗の言葉には妙な説得力があって、俺は何も反論できなかった。

「お前とザクラちゃんを見ていて、お前の気持ちは本物だと思った。まっすぐで、一途すぎると思った。

側からみてもそう感じた、そんな強い想いを、お前は封じきれることができるのか!?」

俺の心にグサリと言葉が刺さる。

---もし、もしも。想いを伝えないまま春風が死んでしまったら。

俺は、あいつへの想いを忘れられるのか?

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