第48話
「エメラルド・・・」
手紙を折りたたみ、次にザクラの視界に入ったのは、蘭が繕ってくれた修行の服だった。
蘭のことを思い出し、思わず抱きしめる。
『これからのあんたには、必要なものでしょ?
これを着て。修行して。
ウィ-ン・ウォンドを倒すんでしょ?
蘭だって、あんたに世界を救ってほしいからこれを直した。
ひと針ひと針に、あんたへの願いや思いを込めたんじゃないのかしら』
昼間、鈴から言われた言葉が思い出される。
『世界を救ってください!海救主様!』
旅の行く先々で言われた、その言葉も。
『世界を救って、ザクラ』
菫が亡くなる直前、ザクラに言ったその言葉も。
---たくさんの願いや祈りが、私の背中に託されている。なんて重い。
逃げ出したい。でも、そうしたら願いや祈りを私に託した人たちは?
「・・・ウィーン・ウォンドに殺されてしまう」
---世界の人、旅の先々で出会った人。家族、そして大事な仲間。みんな殺されてしまう。
仲間を大切に思うザクラにとって、その惨劇は耐えられない。
ザクラはひとつ呼吸をし、ぎゅっと目を瞑る。
---こうしている間にも、ウィーン・ウォンドは、たくさんの命を殺めているだろう。
「・・・いつまでも悲しみに浸っている場合じゃない」
そう言って開いたザクラの目は、以前のものに戻っていた。
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