第47話
「実はさ、蘭にミシンを貸したままだったの。
それで返してもらおうと、蘭の部屋に行った。
そしたら、これがあってね」
鈴は洗濯物を入れる籠から、とある服を取り出した。
「修行の服・・・?」
「そう。あんた覚えてる?
蘭が死ぬ前ぐらいに、あんたが蘭に修行の服の直しをお願いしたのを」
「あ・・・」
ザクラの脳内で記憶が蘇る。
『修行の服、肩の後ろのところが破れていますよ』
『あ-、直さなきゃ。めんどくさいなぁ』
『それなら、私が直しましょうか?』
『え、いいの?!』
『はい。裁縫なら得意ですし、時間もありますから』
『それなら、洗濯したら渡すね』
『はい!』
「そうだったね・・・」
在りし日の蘭の笑顔を思い出し、ザクラは泣きそうな顔になる。
「蘭、頑張って直してくれたみたいよ。ほら」
鈴はそう言ってザクラに修行の服を手渡した。
破れていた箇所はきれいに修繕されていた。
「蘭・・・」
「・・・本当は自分から返してあげたかったんだろうけど」
ザクラは修行の服に顔を埋め、細かく震える。
「・・・ほら、泣かないで。せっかくきれいにされているのに、濡れちゃうわよ」
そう言う鈴の目は優しい。
「これからのあんたには、必要なものでしょ?
これを着て、修行して。
ウィ-ン・ウォンドを倒すんでしょ?
蘭だって、あんたに世界を救ってほしいからこれを直した。
ひと針ひと針に、あんたへの願いや思いを込めたんじゃないのかしら」
「鈴・・・」
「絶対そうよ。
今だって、空からあんたのことを心配しているわ。弟子に心配させてどうすんのよ?」
「そんなの・・・師匠じゃないよね」
「そうよ。だから、しっかり立ち上がって!
涙を拭いて、ちゃんと前を向いて!」
「うん・・・」
ザクラは涙を流しながらそう返事をした。
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