第43話

ザクラside

海救主である故に、憎しみを抱くこともそれを晴らすこともできない。

それが分かって、もう全てが嫌になった。

赤い石と、海宝石を海に捨てようとした。

マルリトスが止め、自分のしようとしたことのリスクを知って、踏み止まった。

でも、嫌な気持ちは消えない。

空も泣いているのだろうか。雨が降ってきた。

マルリトスは『帰るぞ』と言ってきたけど、

帰りたくなかった。

「おぬし、病み上がりじゃろ!

また体調を崩したら、仲間たちが悲しむぞ?」

なかなか立ち上がらない私に、マルリトスは言葉を荒げる。

もう、体調や怪我がどうなっても構わない。

そう思った。

「・・・マルリトス。もう、放っておいて」

冷たくそう言うと、マルリトスは去っていった。

空からの雫と、私の目からの雫が私の身体に混じっていく。

すると、空からの雫がいきなり止んだ。

「え?」

「怪我の次は風邪か?春風」

思わず後ろを振り返ると、星利が私に傘を差していた。

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