第38話

「ザクラ。お粥作ったんだけど、食べる-?」

鈴はお盆を手に、ザクラの部屋を訪れた。

「ザクラ-?」

ドアをノックしてみるも反応がない。

鈴の頭の中で一瞬、最悪な場面が浮かんだ。

「ザクラ!?ザクラ!?」

鈴は先ほどよりも激しくドアを叩く。

すると、ガチャリとドアが開いた。

「50代目は大丈夫じゃ。そんなに激しくドアを叩かなくても」

開いたドアからマルリトスの顔が覗いた。

「マルリトス!」

「飯を持ってきてくれたのか?」

マルリトスが鈴のお盆に目を向ける。

「ええ。食欲無いって言っていたけど、絶対お腹空いているはずよ。それに、何日食べてないのよ?」

「蘭が死んでから3日間食べておらぬな」

少し考えてからマルリトスはそう言った。

「3日も!?」

「ああ」

「星香さんが、ザクラが痩せたって言っていたのよ。ガリガリになっていなければいいけど」

「3日ではガリガリにはならん。今のあやつは動けないしな」

鈴とマルリトスはザクラの部屋の中へ入る。

「ザクラ・・・」

久しぶりに見るザクラは、ベッドの中で眠っていた。

「今さっき、あの女医に診てもらった。

だから、今は少し落ち着いている」

ザクラが目を覚まさぬように小さな声でマルリトスは鈴に説明する。

「そう・・・」

やはり顔が少し痩せた、と鈴は思った。

「じゃあ、また起きたら呼んで?」

「ああ」

鈴はお盆を再び手にしてザクラの部屋を出ようとした。

「・・・す・・・ず?」

いつものザクラよりずっと幼い声がして、鈴は振り返った。

「ザクラ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る