第4話 溢れる雫

第33話

ザクラside

気がつけば、自分の部屋にいた。

「50代目!」

「・・・マルリトス・・・?」

寝ている私の横でマルリトスが叫んでいた。

「っつう・・・!」

体を起こそうとするも、体のあちこちから激痛が走る。

「バカ!あんだけの傷を負ったんだ!寝てろ!」

そう言ってマルリトスは、部屋から駆け出した。

「あんだけの傷・・・」

脳内で、デッキの上での死闘がフラッシュバックする。

ウィ-ン・ウォンドがイルカの国を襲い、そこの姫であるエメラルドが、私に海宝石のティアラを託した。

それを狙って、ウィ-ン・ウォンドがこの船にやってきた。

死闘の末、私は傷を負いティアラを庇った。

そして、そんな私を庇って蘭が---。

『ザクラ・・・さん。あの時・・・助けていただいてありがとうございました・・・』

『謝らないでくださいよ・・・。私・・・幸せでしたから・・・』

「幸せだったなんて・・・」

---そんな訳ない。

「・・・また、大切な人が・・・!!」

『もう二度と、大切な人を死なせない。

傷つけやしない』

---そう、誓ったはずなのに!

堪え切れない思いが溢れ出し、気がつけば大きな声で泣いていた。

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