第30話

ザクラ対ウィ-ン・ウォンドの戦いは激しく、船が大きく揺れている。

北斗たちはザクラのフォローにまわろうと変身したはいいものの、あまりの激しさに入り込めないでいた。

「春風・・・」

星利はザクラのフォローにまわれず、悔しそうにしていると、北斗と蘭からチョップが入った。

「いてぇ!2人とも何するんだよ!?」

「悔しいのは私たちも一緒ですよ、星利さん」

蘭はそう言って、絶狐の9本の尾をゆらゆら揺らす。

「だからせめて、鈴ちゃんたちを守らないと」

そう言いながら北斗はじっとザクラたちの戦いを見つめている。

「ごめんなさいね、蘭ちゃん、星利、北斗くん」

「ごめんも何も。もし、最悪ケガ人がでたら助けてもらわないといけませんから。

星香さんや鈴さんが倒れたら、みんな死んでしまいますよ」

「あと『守れなかった』と、ザクラちゃんに泣かれますから」

そう談笑してはいるが、その場にいるみんながみんな震えていた。

ウィ-ン・ウォンドの覇気とザクラの表情の厳しさ。

以前、ザクラが『マルリトスの修行のおかげで運命はなんとかなりそうだ』と、仲間たちに話していた。

だが、実際戦いを見てみると、『ウィ-ン・ウォンドを倒す代わりに50代目の命が危うくなる』という運命なんて、到底変えられないような気がした。

「春風・・・」

と、その時。ウィ-ン・ウォンドがザクラのみぞおちに一撃を与えた。

ザクラは陣で守ろうとするも間に合わず、

体を2つに折り倒れた。

「がはっ!?」

「春風!」

「ザクラちゃん!」

みぞおちへの一撃と、他の度重なる攻撃によりザクラは起き上がれない。

「なんだ、懐に隠していたのか」

ザクラとは反対に傷があまりないウィ-ン・ウォンドがにやりと笑う。

ザクラはハッと我に返り、近くにイルカ国のティアラが転がっているのを見つけた。

---みぞおちへの打撃で落ちたんだ。

ザクラは倒れたまま、ティアラを離すもんかと、抱きかかえた。

「ティアラは渡さない!」

ザクラは呼吸が荒々しいまま、ウィ-ン・ウォンドを睨みつける。

「ならば、力ずくにでも奪ってやる!」

ウィ-ン・ウォンドは刀をザクラに振りかざした。

ザクラはティアラを抱きかかえたまま、ギュッと目をつぶった。

と、その時。ザクラとウィ-ン・ウォンドの間に誰かが入る気配がした。

そして、ザクッと斬られる音がデッキ上にて響いた。

---え・・・?

斬られた音が自分からではないこと。

斬られた感触もないことを不思議に思ったザクラは、恐る恐る目を開けた。

「・・・大丈夫ですか、ザクラさん」

そこには、蘭の背中があった。

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