第24話

「はあ、お腹すいた」

あれからこっぴどくしごかれたザクラはそう呟きながら、リビングの戸を開けた。

「あ、お疲れ様です!ザクラさん」

リビングのテーブルに皿を並べている蘭がザクラに気がついた。

「ああ、お疲れ。蘭」

「ザクラさん、げっそりした顔してますけど。

大丈夫ですか?」

「まあ、なんとか?久しぶりにマルリトスにしごかれたからね・・・」

「ここ数日間、体調が悪そうでしたから、マルリトスも加減していたんじゃないですか?」

それを聞いてザクラは苦笑する。

「みんな、数日間体調が悪そうって言うね。

そんなに悪そうだった?」

「ええ。いつもなら3杯ぐらいおかわりをするのに、ここ数日間は全くしませんでしたし」

「私めっちゃ食べる人みたいじゃん」

「実際問題、動き回るからその分エネルギーが必要なんでしょう?」

「まあ、そうね・・・」

「蘭、ザクラ!これ持っていって!」

そこへ台所から鈴が2人を呼んだ。

「は-い!」

ザクラと蘭は話を中止し、鈴の元へ行く。

「・・・ねえ、これ麻婆豆腐でしょ?

なんでこんなトマトジュ-ス並みに赤いの?」

鈴が運んでほしい、という明らかに辛そうな麻婆豆腐を見てザクラは眉をしかめる。

「暑いでしょ?スタミナ回復にいいかと」

「いや、気持ちはありがたいけど。

辛めじゃないでしょ!絶対辛いって!」

辛いものが苦手なザクラは鈴に抗議する。

「でもさ、ザクラ。これ作っちゃったんだよ?捨てるとバチ当たるわよ?」

「うっ・・・」

幼い頃より、『食べ残したらバチが当たる』と厳しくしつけられたザクラはぐうの根が出ない。

「・・・分かりました。頑張って食べます」

「まあ、ムリしなくてもいいのよ?」

「なんとか頑張るわ・・・」

そう言ってザクラは麻婆豆腐の入った皿を運ぶ。

その後ろ姿を見て蘭はあることに気がついた。

「ザクラさん」

鈴から料理を受け取り、ザクラに歩み寄る。

「ん?どうした?」

「修行の服、肩の後ろのところが破れていますよ」

「え、嘘!マジで!?」

ザクラは慌ててその部分を見る。

ぱっくりではないが、肩の後ろ側が破れていた。

「あ-、直さなきゃ。めんどくさいなあ」

ザクラはそう言ってため息をつく。

「それなら、私が直しましょうか?」

「え、いいの?!」

「はい。裁縫なら得意ですし、時間もありますから」

「それなら、洗濯したら渡すね」

「はい!」

だが、この修行の服が思わぬ形でザクラの元へ返ってくるとは、まだ誰も知らなかった。

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