第2話 甘い、辛い

第22話

ザクラがひとつ歳を重ねて一週間が経った。

あの変な夢というものも嘘みたいにみなくなり、ザクラはすっかり元気になっていた。

「これ、肘が下がっておる!」

「はい!」

ザクラとマルリトスは、デッキの上で秘剣を使った修行をしていた。

「ザクラ、元気になったみたいで良かったわね」

「ああ」

鈴と星利は、ザクラへのお茶を運びながら、デッキの様子を見ていた。

「あのザクラでも暑さには勝てないわよね」

「『あのザクラでも暑さには勝てない』って。

春風は超人じゃねえんだから。

まあ、ジャンルによっちゃ、人間レベルじゃないけど」

「でも良かったよね。元気になって」

「ああ。顔色も良くなったし、よく食べるし。

力任せに剣振り回しているし」

「・・・最後のは私でも分かるけど、よくザクラのこと見てるのね。流石、ザクラに惚れているだけあるわ」

「なっ!?」

たちまち星利は顔を赤くする。

「もう、いちいち照れないでよ。まわりにはバレてるんだから。残念ながらザクラにはバレてないけど」

ふふふ、と鈴が口元に手をあてて笑う。

「バレてたら、こんな苦労してねえよ」

「でしょうね。ま、頑張ってくださ-い」

「うるせえ。ほら、お茶がぬるくなるぞ」

「はいはい」

鈴と星利はザクラとマルリトスに声をかけた。

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