第3話 秘剣
第61話
翌日。ザクラ以外のメンバーは、ザクラの誕生日を祝うため、朝食後からドタバタとしていた。
一方、本日誕生日を迎えた本人は、今日が自分の生まれた日だというのを忘れ、自室にいた。
「これが、『海救主の秘剣』・・・」
『ハイム』の店主から受け取った秘剣の包みを解いたザクラは、感嘆の声をあげた。
鞘から刀身まで白金に輝く秘剣は、『預言』にいわれるザクラそのもののようだった。
剣の持ち手には龍と植物のツルが絡みついたような細工がされており、中心には海宝石を模した宝石と、スミレの花の紋が刻まれている。
「綺麗だね。さすが、『秘剣』というだけあるわ」
「代々の海救主が使ってきたものだ。大事にするんじゃぞ」
「うん」
ザクラはしげしげと秘剣を眺める。
遠目で見ていると分からないが、確かに誰かが使っていたのであろうと思われる傷が残っている。
---ああ、やっぱりマルリトスの言っていたことは本当のようね。
そう思ったザクラの視界に、あの小さな木箱の姿が入った。
「う-ん・・・」
ザクラは小さな木箱を見つめて腕を組む。
「やっぱり気になるのう、その木箱」
「その言い方だと、中身を知らないみたいね?」
「ああ。菫が持っていた記憶がない。
かと言って、他の歴代の海救主が持っていたとは思えぬ。まあ、わしが忘れたのかもしれないが」
「しっかりしてよ、おじいちゃん」
「仕方ないじゃろ、海宝石ができる以前から生きておるのじゃから」
「え、海宝石ができる前から?」
ザクラはその言葉に引っかかる。
「・・・あんた、海宝石の精なんじゃないの?」
「海宝石の精じゃよ。まあ、それはまた詳しく話そうかの」
「え-、話さないの-?ケチ」
「ケチじゃないわ!-とりあえず、50代目」
ひと呼吸おいてマルリトスはザクラを見上げる。
「木箱は後じゃ。この前、術具に力を流し込む方法を教えたじゃろ?それをこの秘剣にやるぞ」
「え、あれを?」
「本来、あの方法はこの秘剣のためにあるといっても過言ではない。秘剣に海宝石の類の石がはめられておるからの、力を流し込みやすいと思うが」
「そうなのかな・・・」
ザクラは秘剣を見る。キラリと秘剣が白金に輝いた。
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