第59話

「いやぁ、すこぶる元気な人だったな。

親父、あの人、何者?友達の娘か何か?」

ザクラが去って、ジャンがカウンターに様子を伺いにきた。

「50代目の海救主だよ」

「え、あの予言の!?マジで!?」

「『世界を白に染め直す』っていわれている、50代目の海救主だよ」

「うっわ-!サインでももらえばよかった!」

「バカたれ、芸能人じゃないんだぞ!」

「は-い」

ジャンはそう言って、店内の掃除を始めた。

白髭の男性は、ザクラが去っていった扉を見つめる。

『私、この子に海救主の秘剣を託す。

だから、いつかこの子が来たら、渡してほしいの。あなたの美味しいコ-ヒ-でも入れてあげながら』

---菫はいつぞやそう言って、愛おしげに大きくなったお腹をさすっていた。

『もしかしたら、元気すぎて普通じゃない尋ね方をするかもしれないけど、許してあげてね』

---花が咲く笑顔で怖いことをいうもんだな、と思った。

でも、菫の言う通りだったかもしれない。

そういえば・・・あの子も、花が咲くような笑顔をしていたな。

『もしも海の色に輝く石をあの子が持っていたら、私はこの世にいないかもね。

あの子が後を継いだということでしょうから』

---あの子は・・・海の色の石を持っていた。かけらではあったけど。ああ、そういうことか。

「菫・・・」

---君は、あの世に行ってしまったのか。

あの子に、この世界を託して。

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