第57話

「それで、何の御用でしたかな?」

マルリトスとザクラはそれぞれ、男性が入れてくれた飲みものに舌鼓を打っていると、男性がそう言った。

ザクラは慌てて用件を思い出す。

「実は、本を整理していたら、このような手紙が入っていまして」

ザクラはカバンから、母からの手紙を取りだし、白髭の男性に見せる。

宛名の筆跡に見覚えがあるのだろう、男性は驚く。

「私宛てのものでしたので、封を解きました。すると、こんなことが書かれていたのです」

ザクラは母からの手紙に、この場所のことが書かれていたこと、そこに海救主の秘剣があり、それを取りに行くように書いてあったことを話す。

「確かに、菫から一本の剣を預かっています。

それが、『海救主の秘剣』であるかは分かりませんが。少しお待ちを」

「はい」

男性はそう言って、カウンターのすぐ隣にある扉をあけると姿を消した。

「お待たせいたしました。こちらが、菫から預かっていたものです」

2、3分経過した頃、白髭の男性は布に包まれた細長い箱と、小さな正方形の木箱を持って現れた。

「ありがとうございます」

「いえいえ。秘剣ではないと思いますが、そちらの木箱も菫が、あなたにと」

「これもですか?」

「はい」

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