第56話

店の中は、外観と同じく年季を感じる内装で、

アンティークのものと思われるテ-ブルや置物が置いてある。

「申し訳なかったね。どうぞ、こちらへ」

カウンターでは、白髭の男性がエプロンをつけ、ザクラを案内した。

「お邪魔します」

ザクラは案内された席に座る。

白髭の老人は、カップにコーヒーを注ぐ。

インスタントではない、本格的に入れたコーヒーの香ばしい香りが店内に広がる。

「どうぞ」

コーヒーの入ったカップがザクラの前に出される。

「ありがとうございます」

「猫ちゃんはどうします?」

「え?」

ザクラが慌てて、周りを見た。そこには、カウンターのザクラの席の下では、マルリトスが居心地が悪そうな顔をしていた。

「あ!すいません、飲食店なのに!」

「構いませんよ。どうやら、あなたにとって大切な相棒のような感じみたいですから」

そう言って白髭の男性はにこりと笑う。

ははは、とザクラは作り笑いをする。

「あんた、海宝石に入らなかったの?」

ザクラは、白髭の男性に聞こえないようにマルリトスに話しかける。

「入るタイミングがなかったんじゃよ」

「仕方ないか・・・。ホットミルクでいい?」

「ああ」

「すいません、ホットミルクでも大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」

白髭の男性は特に不審がっているように見えなかったため、ザクラはとりあえずホッとした。

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