第50話

「手紙だね」

「何が書いてあるんじゃ?」

ザクラは近くにあった椅子を引き寄せて座った。

「えっとね---」

---私の大事な子、ザクラへ。

この手紙を読んでいる貴女は恐らく、旅の真最中でしょう。きっと、私の後を継いで。

私は今、産まれる前のあなたをお腹に抱え、アミナスという港に来ています。

貴女は、私のお腹の中で修行をしているみたいに動いているから、きっと元気な子に育っていることでしょう。

私がこの、アミナス港に来た理由。それは、先代の海救主として、50代目の海救主となる貴女へ贈りものを残すため。

海救主というのは、元は私の実家が代々継いできたものです。だけど、私が49代目を継いですぐ、家は襲われ私は命からがら逃げて来ました。幸いそれから何もありません。ですが、『50代目の海救主』の予言を聞き、代々の海救主に伝わる秘剣を、貴女に託すことにしました。

本来の海救主の術具は手裏剣。でも、それは使いにくい時もあるでしょう。恐らく、貴女を待つ運命には勝てないでしょう。

でも、海救主の秘剣にはそれができる。

秘剣を使い、自らの使命を全うなさい。

秘剣は、私の信頼する友人で、ある喫茶店のマスターに預けてあります。

いつか寄ることがあれば、秘剣をとりに行きなさい。

では、私の愛しい子の旅に幸多きことを、心から願っています。

第49代海救主、貴女の母。 春風 菫より。

「お母さん・・・」

今は亡き母からの手紙にザクラは目を潤ませる。

「菫・・・、やっぱり分かっていたんじゃな。

おぬしが50代目の海救主になるということと、過酷な運命にいるということを」

「うん」

ザクラはぐいっと涙をぬぐい、二枚目の紙をみる。

それは地図であり、『ハイム』と記されている建物に赤い丸がつけられていた。

「この、ハイムというのが、お母さんの信頼する友人の喫茶店なのかな?」

「さあ?実際行ってみないと分からないけどのお」

「よし、北斗にお願いしてみるか」

ザクラはそう言って、椅子から立ち上がった。

「お願いしにいくのはいいが、本の整理残っているの忘れないようにの」

「・・・そ、そうだったね」

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