第42話

港町の市場をザクラは地図を見ながら歩く。

その傍らにはマルリトスが早歩きでついていく。

「おい、50代目。歩くの早いぞ。少しはこっちの身にもなれよ」

「なんか見てると面白いね、猫の早足って」

ちょこまかと歩くマルリトスの姿を見てザクラが笑う。

「面白がってる場合か!こっちは大変なんじゃよ!?おい、ちょっとしゃがめ」

ザクラが足を止めると、マルリトスは肩を上下させて呼吸をする。

「はいはい」

ザクラは渋々しゃがむと、マルリトスがザクラの懐へ入ってきた。

「わっ?!な、なに?!」

「もう歩くのしんどいわ。50代目、わしを抱きながら歩け」

「ちょっと、まだ買い物済んでないんだけど!?」

「買い物済むまでならいいじゃろ」

ザクラはため息をついて、マルリトスを抱えて歩くことにした。

しばらく歩き、ようやく鈴に頼まれたものを買うことができた。

「ほら、もう買い物済んだから。降りてよ」

「ちっ」

紙袋を手にしたザクラは、再びしゃがみマルリトスを地面に下ろした。

「さ、あとは帰るだけじゃな」

マルリトスは後ろ足で耳を掻く。

「そうね」

ザクラとマルリトスは再び歩き始める。

ザクラはある程度歩いたところで、船への道を外れた。

「おい、50代目?そっちは違うぞ」

するとザクラは、紙袋から調味料を取り出し、パ-カ-のポケットにしまう。

「50代目?」

怪訝そうなマルリトスはザクラを見上げる。

するとザクラはマルリトスを抱え、肩に掴ませた。

「ちょ、急になんじゃ?!」

「・・・マルリトス。さっきから誰かに尾行されてるんだけど」

ザクラはマルリトスだけに分かるように呟く。

「え?!」

マルリトスは驚く。

が、ザクラの肩越しに自分たちを追ってきているのが見え、落ち着きを取り戻す。

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