第43話

「なるほど。その察知は早いんじゃな」

そう言いながら、マルリトスは真剣な顔になる。

「うるさい」

「で、どうするつもりじゃ?見たところ、一般人じゃなさそうだぞ」

「とりあえず、このまま船へは帰れないね。鈴たちを巻き込みたくないし」

「戦うのか?」

「それしかないでしょ」

「でも、船ではないとしても、ここは市街地じゃぞ?それこそ周りに被害が出るぞ」

「もちろん、それを考えた上で、今路地に入っている」

ザクラはズンズンと路地を進んでいく。

「なるほどな・・・」

---こいつ、最初からそのつもりで・・・。

「勝つ確信はあんのか?」

「どうせ、雑魚ばかりでしょ?勝てるよ」

「ずいぶんと自信あるんじゃな」

「少なくとも、ウィ-ン・ウォンドよりは弱いっしょ」

「そりゃ、そうじゃが・・・」

ザクラはとある場所で足を止めた。

「50代目?」

「マルリトス。海宝石の中に入れる?」

「入れるけど?」

「あんた、海宝石の精でしょ。中から力を貸してちょうだい」

そう言ったザクラは、まるでこれからの戦いに胸を躍らせているかのようだった。

マルリトスは大人しく海宝石の中に入る。

ザクラは自分の士気を上げながら、徐々に海救主化していく。

「なんの用事?追いかけてんのはわかってんだけど?」

完全に戦う体制になったザクラは、追いついた追っ手に睨みを効かせる。

「お前が50代目の海救主、春風ザクラだな」

ゾロゾロと複数の男たちがザクラの前に現れる。

「わかって追いかけていたんじゃないの?」

ザクラはふんと、鼻で笑う。

「ウィ-ン・ウォンド様のご命令により、お前の命と、海宝石を頂戴する!」

「だろうと思った」

「覚悟!」

男たちがザクラに襲いかかる。

「陣!」

ザクラは男たちに襲われる前のわずかな時間で、自分にシ-ルドを張る。

そのため、男たちは壁にぶち当たることになり、ゴンと硬い音がした。

「こ、このクソ野郎が!」

「私は女だっつうの。しかもクソなんかつけんなよ」

ザクラは準備運動なんかして余裕を敵に見せつける。

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