第38話
「あんな美人なのに、今まで色恋沙汰とかがなかったのは、そういう鈍感ちゃんなところもあると勝手に思ってます」
「確かにな」
「まぁ、本人もそれどころじゃないかもしれないし?他のことでいっぱいいっぱいなんだと思うよ」
そう言って2人は、相変わらず寝息を立てているザクラを見た。
「だから、星香さんたちが言うようにこっちから押すしかないんじゃないかしら?」
「そりゃそうなんだけどよ・・・」
星利はため息を漏らす。
「大丈夫だって。ザクラだって、星利くんのこと嫌いではなさそうだし」
「いやぁ、あいつは俺を仲間だとしか思ってないんじゃないかな。告白してさ、この関係が壊れたらどうしようかと・・・」
「だからといって、ずっと言わないでいるの?星利くん、今ザクラがどういう状況か分かってる?」
普段はおっとりとした口調の鈴が声を荒げる。
「わ、分かってるよ。こいつに時間がないことなんて」
「なら、早く告白してよ。そうすれば、短い間だけど、ザクラは幸せな時が過ごせるかもしれないのよ」
「水神・・・」
「私は、物心ついた時からザクラと一緒にいた。楽しい時も悲しい時も。あの子が母親を亡くした時のことも知っている。もう、あの子に悲しい思いをさせたくないの」
そう言って鈴は涙を流し床にしゃがみこむ。星利はそんな鈴に駆け寄る。
「あの子には、ザクラには幸せになってほしいのよ!」
「お前・・・本当、春風思いなんだな」
鈴が抱くザクラへの思いに星利は胸を打たれた。
と、その時。
「星利、なに鈴泣かせてるの?」
ソファーからザクラの声がした。
「は、春風?!」
「ザクラ?!」
いつから起きていたのだろうと、星利と鈴は慌てる。
ザクラはソファーの上で目をこすりながら起き上がる。
「ザクラ、私が勝手に泣いただけだから安心して。星利くんは何もやってないよ?」
うんうんと、星利は力強くうなずく。
ザクラはまだ少し眠たそうな目で2人をじっと見る。
「・・・ふ-ん。ならいいけど」
しばらく見た後、ザクラは諦めたらしく大きく伸びをした。
2人はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
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