第34話

「女神様っつうのも、なんか一方的だったな」

「うん」

あれは夢だったのか、そう呆然となるザクラたちは再び夜の闇の中にいた。

「おい、50代目」

「おぅ?!」

下から声がしてザクラは思わず野太い声を上げる。

そんなザクラを見て、マルリトスという名の海宝石の精はため息をつく。

「またため息をつかれた!?」

「なんじゃ、その野太い声は。先代は女らしさ全開の美人だったのに。世界を白に変えるっつう、50人目がこんなジャジャ馬か」

まるでお年寄りが話すみたいな口調である。

「なっ?!」

「はぁ。やる気しないのう。先代が美人で、その子どもだと聞いたから美人だと思ったのにな」

「あんた・・・猫のクセして美人好きだな?!」

「美しいものには価値があるからな」

ドヤ顔で海宝石の精は言う。

「名言みたいに言うな」

「まぁ、何はともあれ、女神さまの命令だからやるしかないか」

「面倒くさそうだな、おい」

「50人目。わしは今こそ実体化してはいるが、ずっと海宝石の中で今までを見てきた」

海宝石の精は急に真剣な顔になる。

「先代からおぬしに海宝石を託された時も、おぬしが海救主に覚醒した時も。どのように戦ってきたかということも、何回も無茶をしてぶっ倒れたこともな」

ザクラは信じられないという顔をして海宝石の精を見る。

「そして、これから待ち受けていることもな。

で、だ」

「何?」

「わしがこれからおぬしを指南してやる。どうせ自己流で今までやってきたんじゃろう」

「た、確かに・・・」

なんせ、ザクラは『50人目の海救主』だということも知らなかった。そのため、今までガムシャラに戦ってきた。

「先代が生きていれば、教えを乞うこともできたかもしれぬ。だが、今はそういうわけにはいかんじゃろう」

ザクラはうなずく。

「今まで数々の戦いを見てきたがの、おぬしの戦い方や力の使い方はムラがありすぎる。そんなんじゃ、生き死にはおろか、敵を倒すことはできやしないぞ」

ザクラは悔しそうに唇を噛む。

「まずは、そのムラを無くすぞ。さすれば、道も開かれるじゃろう」

海宝石の精はじっとザクラを見る。

「わしは容赦ないからの。覚悟しろ、50代目」

ニヤリと海宝石の精が笑った。

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