第13章 「マル」は海、「リトス」は宝石

第1話 女神と猫

第33話

「うわっ?!」

とある夜。デッキの上で修行をしていたザクラと、付き添いでいた星利はまばゆい光に驚きの声を上げた。

「こんばんは。海救主、星見の王」

まばゆい光が止み、代わりにとある女性が立っていた。

「え、えーと・・・?」

優雅に笑みを浮かべる女性に二人は困惑する。

「私は海の女神。海救主、あなたに贈り物をしにきました」

「う、海の女神?」

海の女神。そう言われれば確かにそんな感じの雰囲気がある。と、二人は目を合わせた。

「海救主。あなたはウィ-ン・ウォンドを倒さなければなりません。その際、命の危険があることもご存じですよね?」

海の女神の言葉に二人は真剣な顔になる。

「・・・はい」

「歴代の海救主でさえ経験したことのない、激しい戦いとなるでしょう」

「ええ」

「そこで、私から指南役を贈ります」

「指南役?」

「はい。海宝石を私に」

ザクラはよく分からないまま、海宝石を海の女神に渡す。

「今までも大変な戦いだったのですね」

激しい戦いで、もはや石ではなくかけらの集合体となった海宝石を海の女神は撫でる。

そして、両手で海宝石を包み瞼を閉じた。

すると、海の女神の両手から白い光が溢れ出した。

海の女神はそれを球にし、ゆっくりとデッキに下ろす。

デッキの上に下された光の玉は次第に小さくなり、最後に現れたのは丸くなって眠っている灰色の猫だった。

「ね、猫?」

「海救主、海宝石を返します」

「は、はい」

海の女神はザクラに海宝石を返す。

そうしている間に丸くなっていた猫が目を覚まし、大きく伸びをした。

そしてツカツカと、海の女神の横にやってきた。

「お呼びでしょうか、女神さま」

「しゃ、しゃべった?!」

見上げる瞳はまるで海宝石の色のようで、灰色の背中にはイルカのような白い模様があった。

「指南役をあなたにお願いしたいの。50人目の海救主のね」

「かしこまりました」

なんとも風変わりな猫はまるで人がするみたいに頭を下げた。

「して、その50人目の海救主はいずこで?」

猫はあたりをキョロキョロと見回す。そして、海宝石を首から下げたザクラと目があった。

「なるほど、お主が五十人目・・・」

猫はザクラの頭から足先までジロジロと見る。

「な、何?」

ザクラの体を見た猫は大きくため息をつく。

「ため息つかれた!?」

「それでは頼みましたよ、マルリトス。海救主、あなたに幸あらんことを」

そう言って、海の女神は登場と同様にまばゆい光を放って消えた。

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