第32話

「銀の人魚、いや、春風ザクラ。7歳の頃、セルラン島で俺を助けてくれてありがとう」

星利は目を細めて優しい笑みを浮かべた。

ザクラは眉尻を下げ泣きそうな顔になる。

「あの子が星利なの・・・?」

「ああ」

「よかった。ちゃんと元気でいてくれて」

ザクラの目から涙が落ちる。

「そこまで、昔助けた奴のことを心配してたのかよ。相変わらずめでたい奴だな、お前は」

「助けた人だからだよ。気になるじゃない」

---全く、どこまで優しいんだよ。こいつは。

「・・・ま、そんな優しいところに惚れたんだけどな」

「え、なんか言った?」

ぽろりと出た言葉に星利は慌てる。

「い、い、いや。何も!?」

---危なかった・・・!!

星利は口を押さえ、顔を赤くする。

「でもステキだよね、助けた人がまさかの仲間になるなんてね」

ふふふと、ザクラはまだ目尻に涙を残しながら笑う。

今度は脅しなんか含んでいない、心から嬉しそうな笑みだった。

「仲間か・・・。」

---でも俺にとってお前は、仲間を通り越した存在だけどな。・・・って、なにさむいこと考えてんだ俺は!

星利はそんなことを考えた自分を心の中で殴った。

「ねぇ、星利」

ザクラは星利がそうなっているとは知らず、幸せそうに笑っている。

「あ?」

「これからもよろしくね」

「お、おう・・」」

ザクラの笑顔は、史上最高に見る満開の大輪の花で、それを見た星利は気が抜けそうな返事をした。

---やっぱり、俺は心底こいつに惚れている。

しばらくザクラに見惚れた星利は改めてそう思ったのだった。

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