第29話

---こいつ、いつの間にかあんな脅す笑顔なんてできるようになったのか?

星利はそのあとザクラに連行されるようにリビングに連れられた。ザクラは上着を羽織り

テ-ブルを挟んだ星利の前に座る。

二人の前には、呑気にゆらゆらと湯気を揺らすマグカップが二つ置いてある。

緊張と不安、今すぐにでも逃げ出したい気持ちやらが星利の心中では渦巻いている。

「で、お話していただけますかね?理由とやらを」

マグカップの中身に口をつけたザクラは、マグカップを置く。星利は膝の上に置いた拳をグッと握る。

「あのさ」

ザクラは星利に目を向ける。

「俺さ。あることが分かって戸惑いまくっていたんだ。だからあんな態度をとった。」

「なるほど、そうだったの」

「うん。本当に悪かった」

ザクラは頭を横に振る。

---こいつ、まさかこれから話すことが自分のことだとは思ってないだろうな。

「俺さ、お前に話したよな」

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