第19話

星利の頭の中で、銀の人魚に助けられた当時の映像が再生される。

そこにいる銀の人魚と、幼きザクラはまさに瓜二つだった。

ザクラの着ているワンピース型の水着には星利の大切にしている、鱗のようなものがたくさんついていた。

記憶では、銀の人魚の右腕には痣があり、写真の中のザクラの右腕にもその痣があった。

「懐かしいわね。7つの頃、セルラン島で撮ったの。夏休みで、ザクラの家と私の家族で遊びに行って」

鈴の声が星利には届かない。頭の中では、銀の人魚がザクラだということがぐるぐると回っている。

「星利くん?」

話に反応しない星利を見上げる鈴。

「なぁ、水神。ちょうどその時、春風どこかにいなくならなかったか?」

鈴は首を傾げながら記憶を思い起こす。

「ああ、少しいなくなったわね。探していたら水浸しで見つかったけど」

鈴の言葉で、頭の中にあるピ-スがぴったりはまったのを星利は感じた。

「それがどうしたの?」

「い、いや。なんでもない」

星利はコ-ヒ-を勢いよく飲み干すと、シンクに置く。

「大丈夫、星利くん?」

「ああ、大丈夫だ。じゃあな」

星利はそう言って鈴に手を振る。

「う、うん?」

鈴は首を傾げながら手を振り返す。

星利がリビングを出てリビングの戸が閉まる。が、そのすぐ後、星利が転んだ音が響いた。

「大丈夫じゃないわね」

鈴はやれやれとため息をついた。

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