第2話 発覚

第18話

翌日。お腹を掻き、大あくびをしながら星利はリビングに入った。

「あ、おはよう、星利くん」

リビングのソファーでは、鈴が分厚くて大きな冊子を眺めている。

「珍しいね、こんな時間に起きるだなんて」

鈴の声に時計を見ると時刻は昼に近く、だいぶ眠っていたのだと星利は気づく。

「ご飯は?食べる?」

鈴は冊子をパタンと閉じソファーから立ち上がる。

「いや、いい。昼近いし」

星利は鈴を制してヤカンに火をかける。

「そう?」

鈴は再びソファーに座る。

「そういや、水神は何見てんの?」

マグカップにコ-ヒ-と砂糖、それと粉ミルクを入れながら星利は訊ねる。

「アルバムだよ。昨夜自分の部屋の掃除をしていたらでてきて。見たいと思ったけど、そうすると掃除が止まっちゃうから今見ているの」

「なるほど。にしても夜に掃除とか。偉いな、水神は」

「ふと気になっちゃってね。それに汚いと運気下がるとか言うじゃない。」

「確かにな」

「・・・本当はザクラの部屋を掃除して運気上げさせたいんだけどね」

そう言う鈴の声は切なさを含んでいる。

「そうだな」

ザクラに待ち構える過酷すぎる未来。それを何とか変えよう、変えたいと仲間たちはおそらく本人以上に動いている。

「俺らのできることは限られているからな」

「うん」

鈴は声を最後にリビングが静かになる。が、それを消し去るように、火にかけていたヤカンが鳴りはじめた。

「お、沸いた」

星利は火を止め、マグカップにお湯を入れる。スプーンでマグカップの中身をさらりと溶かすと、マグカップを口にしながら鈴のいる場所へ向かう。

「あ、懐かしい」

鈴はとあるぺ-ジを見て声を上げる。

「これ、小さい頃の水神と・・・?」

鈴が懐かしいという、その写真を見た星利は固まる。

「ザクラだよ」

「春風・・・?」

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