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「素直じゃないんだから。……薔、きみはねえ、小さいころとちっとも変らないんだよ、敵意がダダもれなところ」


 その言葉にも、薔崋ははっきりと答える。


「兄上の、気のせいです」


「おや」


 礼は、楽しそうにくっと口の端をつりあげた。


「殺されようっていうのに、弱気にならないよね。……認めるのはしゃくだけれど、薔のそういうところは、嫌いじゃない」


 まるで恋人にするように耳元で甘くささやくと、礼は薔崋から離れた。


 髪がぐしゃぐしゃに乱れた薔崋がまっすぐ見つめてくるのに気付いて、クスッと笑う。


「気がかわったよ。刃が触れても震えもしなかったその気の強さと、母上似の顔にめんじて今日は許してあげる」


 礼は踵をかえした。


「しっかり七年の空白を埋めてね。刀の練習も修行も勉強も、気を抜かないで全力でやってみなよ。そうして僕を殺してごらん」


 去っていく兄の後ろ姿をじっと見つめて、やがて薔崋は小さなため息をつくと、書庫へと足を向けた。




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