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「母上のことだって、仕方ないだろう? 僕らは仕事で外に出ていたんだ。それをいつまでも、僕らが悪いみたいにとらないでくれる? ……いいかい?何もしなかったのは、きみのほうなんだよ、薔」
次兄の言葉に、胸がぎゅっと締め付けられるような気がした。
「……っ」
「ほんっと……役に立ちもしない。考えが変わっちゃったなあ~。小さい頃はまだ可愛げがあったんじゃないの? 母上にそっくりの顔……もったいないから、殺したくなかったのに。……残念だね、薔?」
すらりと、礼の太刀が抜かれる音がした。
「選ばせてあげる。頭を斬り落とすのがいい? それとも心臓を一突きかな? ああ、昔言ったような殺し方もあるけど?」
ニッコリと笑うその顔は、いつもと少しも違わない。貼り付けたような笑顔だ。
この軽薄な笑顔で語りかけられると、薔崋はいつも金縛りにあったように動けなくなる。
薔崋の顔を眺めていた礼が、ふと思いついたように言う。
「それとも、僕を殺してみる?」
「……」
おもちゃをみつけた子どものようだ、と薔崋は思った。
「薔崋。きみがもしも僕らを殺すことができたなら、この家から解放してあげる。誰にも追わせない。自由にさせよう」
のどもとにつきつけられた刃が光る。
「きみの嫌う家から、きみを解放してあげるよ」
耳元で、優しい声がする。
ぞわぞわする。優しさのこもらない優しい声音に、頭痛さえ感じる。
薔崋は声を振り払うように口を開いた。
「私は……っ誰も、嫌ってなどいません……!」
絞り出すようなその声に、礼がくつくつと笑う。
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