2

 妹は不安そうにこちらを見つめ返してくるばかりで、ぎゅっと唇をむすんだまま動かない。


 長い沈黙が落ちて、やがて長兄は少し困ったように眉根を寄せた。


「……では、七年、どんな暮らしをしていたかをきかせてくれ」


 すると、不安げに双眸を揺らしていた妹は、ふっと目を細めた。


「……お珍しいことも、ありますね。殺した夫婦のことをお気にかけられるのですか?」


 責めるような感情が滲む声だった。


「……何?」


「違いましたか? ならそうするかと思っていましたが」


「……」


 長兄はわずかに顔をゆがめて、一度唇を引き結んだあと、頷く。


「……いや、そうだな、父上なら、そうなさる」


 そう言って、再び表情を消す。


「お前は、少年として暮らしていたのだったな」


「はい」


「名も、もらったのだろう? ……薔崋というのは女の名だからな」


「はい」


「何という」


「凡人の名ですので、兄上に差し出すまでもありません」


「……」


 凛とした表情でまっすぐにこちらを見つめてくる妹を、長兄は見つめ返した。


「……お前は、強くなったな」

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