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「ほう?」
有李の発言に、瑛都は嬉しそうに笑った。
「たとえば、論の記載された書物ですが。彼女は内容を理解して、『読んで』いたわけではなく、そこに並ぶ文字として、頭に丸ごと『記憶して』いたのではないかと」
「ほう」
「たとえば、それは書物によっては技であったり歴史であったり物語であったり。彼女は内容を理解していたのではなく、つめこんで文字として認識していた。詰め込んでおいて、年齢を重ねて理解が追いつくようになってから頭の中の知識を順に吸収していた……とか」
なんとなくそんな気がします、と有李は言った。
瑛都が眉を下げて微笑む。
「そうせざるを得なかったんだよ、彼女は。自分よりはるかに年上で、知識も技術も高い者たちを、退けて一線をひくためにはね」
「……彼女が何度も殺されかけていたこと、ご存じでしたか」
「もちろん。本当に危ないようなら助けておけと、姫を見張らせていたけれど、彼女、こちらが手を出すより先に片しちゃうから」
クスクス笑う瑛都は、笑い声に反してあまり楽しそうには見えない。
「ねえ有李。あの方、キミを見た時、落ち込んでいた?」
「あー、いえ。落ち込んでいたというか……逃げようとしました」
「逃げようと?」
「はい。本人は、逃げても無駄だって、ちゃんと分かっていたみたいですけどね」
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