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少女は毎日のように書庫に来て、端の方から順に読んでいく。
やがて、八歳になった彼女が書庫にあった本を読破したらしいという話をきいてから少しもしないうちに、少女は姿を見せなくなり、ついには七年もの間、彼女は書庫からも邸からも姿を消したのだった。
有李は自分が書庫に行くたびにあの少女の姿を探していることに気づいて、素直に寂しく思った。何年も何年も、もういないと分かっているのに無意識に彼女を探してしまう。
そこへある日突然まわってきた上官からの話が、彼女を連れて戻ってくることだった。
有李は気付けばその話を引き受けていた。
久しぶりに見て、そして初めて会話らしい会話をした少女は、とても美しかった。
男装をしていて、幼かったあの頃の彼女とはまったく違っていたけれど、それでも面影はあった。そして何よりも、
「……ほんと、美人だよなあ。
有李はパタンと本をとじて、息をはいた。
机につっぷすその肩に、ぽんっと手がのせられる。
「何してるんだい。独り言がひどいよ。今日もおかしな子だね」
笑いを含んだ声でそう言った人に、有李は顔をあげて眉をひそめた。
「……
「おや。有李もどう? 庭に生えてた、食べられそうな実だよ」
「食べられそうな、って……。いや、あの瑛都様。それ、絶対食用じゃないです。絶対違うと思います」
目の前に出された赤い実を見て、有李はウゲッとうめく。
ダメだしをうけた、修瓏代表の男は不満そうに首をかしいだ。
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