7
生と死は背中合わせ。
一寸先のことさえ、誰にもわからない。
あの男の気に入らないことをすれば、数日は眠れない夜が続いた。
差し向けられていたのは、どこの人間だったのだろう。
追い詰められては敵うはずも無い体格差だった。それ故にいつも頭で考え続けた。最善を、最良を、生き延びる術を。
眠れずに、生き続けて。
刀をふるい疲れ、泣き疲れ、考え疲れ、気力も果てて眠るのは、利用者の多い昼間の書庫。
古ぼけた本の匂いと、邸の中でどこよりも多い人の話し声になぜか安心して、本棚に寄り掛かって、隅の方で眠った。
腰には刀を佩いたまま。
けれど眠りにおちてみる夢は、いつもきまって悪夢だった。
うなされて泣き叫び、そんなときは、母が自分を探し、見つけて抱きしめてくれた。
『薔、また、一緒に眠ってあげられなくてごめんなさい。いつもいつも、母様、弱くてごめんなさいね……』
そう繰り返し呟きながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。それはこの邸で唯一与えられる人の温かさだった。
けれど、もういない。
母はもういない。
今も、忘れてはいない。
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