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記憶を手繰り寄せる時、思い出すのはいつも、刀のように冷たい言葉だった。
『僕はね、薔崋。キミがどうなろうと、正直まったく興味がないんだ。生きるも良し、死ぬも良し。……まあ言っちゃうと、僕はキミを救ってあげる気はない』
二番目の兄はニコニコ笑っていた。
『でもね。兄上の邪魔をしたら、その可愛い大きな目、えぐるからね? 目だけじゃない。腕とか足とか頭とか、全部、胴体から切り離すよ。分かるよね?』
いつもニコニコ笑って、けれどその目はまったく笑うことのないまま、つりあがった口でおぞましいことを言って。
『僕は、キミを好いていない。憎んでいるわけでもないけど。でも、気に入ってはいない。むしろ、嫌いでも好きでもない、気に入らないというのが正しいのかな?』
昔も今もかわらない、笑みで。
『まあそれはいいや。薔だって、好かれていないことくらい、分かってるよね? 頭いいんだから。どうすればいいかぐらい、わかるね?』
穏やかな口調でそう言い聞かされて、幼い少女はただ人形のように頷いた。
生気を失った瞳。
人形のような可愛らしさ。
けれどそこに、人間らしさはひとかけらもなく。
『それでいい。じゃあ、練習にいっておいで。キミの太刀筋はとても美しいよね。こればかりは才能なのかな。ほんと、殺したくなっちゃうな』
幼い少女はただ、頷いたのだった。――
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