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***




「邪魔をするのですか? 修瓏有李」


 柱の陰からスッと出てきた青年に、彼女は特に何を構える様子もなくそう言った。


 白く細いその手には、鈍く光る刃が握られている。


「いや。俺は試験要員じゃないから」


 有李はあっさり首を振った。目を細めて、わずかに笑ってみせる。


「ずいぶん頑張ってんだね」


 そう言うと、目の前の少女は不快そうに眉根を寄せた。目に見えて疲弊している様子の彼女なのに、有李は隙がないと感じた。


「……何?」


「なにって、試験だよ。こんなもん、本当にただの『』だとでも思ってんの? あわよくばこれに乗じて貴女を消してしまおうってことかもよ?」


 薔崋はその無遠慮な言葉に笑う。気分を害した様子もなく頷いて、


「そうですね。兄やあの男にとっては、まさにそうでしょう。門下の者にとっては試験だとしても。は少しだけそのつもりで、でも大方は私を始末できればいいと考えていると思います」


そんなことを言った。やれやれ、とでも言いたそうな口調で。


「……貴女は、変なところでアッサリしてるんだな。さっきは……最初は、逃げようとしたのに」


「……べつに。昔と同じです。あらゆる修行を与えて忍の子として育てようとはするけれど、どこかで死ねばいいと思っている」

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