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「あの、兄上たち……」
ずっと黙っていた末の弟、信が口をはさんだ。
「なんだ」
「どうかしたの?」
兄二人の視線が同時に向けられ、わずかに慄く。
「あ……ええ、あの、血の匂いがずいぶん強いので、大丈夫かと思って」
「ああ……」
仁は匂いを嗅ぐような仕草をみせる。これは鉄によく似た匂いだ。それと同時に強く匂う生臭さが、単なる金属臭ではないことを示している。
「……薔崋のやつ、派手にやってるな」
「あいかわらず、僕らのお姫様は気性の荒さが天下一品だねえ……」
「礼儀作法も女性としての所作も、母上に教わって完璧に身につけているはずなんですけど……刀を握ると人格が変わってしまうのは今も変わらないようですね」
信がしみじみと呟く。
「文学にも武道にも秀でた子なのに、あの残虐さはどうにかならないんでしょうか」
その呟きに、礼がわらった。
「だから、気に入らないんだよね」
そして、つい、と兄を見た。
「ねえ兄上。あの夫婦、どうしたの?」
「お前にしては、つまらん質問をするな」
それをきいて、礼は面白そうに笑った。
「そっか。殺したんだねえ……」
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