3

「あの、兄上たち……」


 ずっと黙っていた末の弟、信が口をはさんだ。


「なんだ」


「どうかしたの?」


 兄二人の視線が同時に向けられ、わずかに慄く。


「あ……ええ、あの、血の匂いがずいぶん強いので、大丈夫かと思って」


「ああ……」


 仁は匂いを嗅ぐような仕草をみせる。これは鉄によく似た匂いだ。それと同時に強く匂う生臭さが、単なる金属臭ではないことを示している。


「……薔崋のやつ、派手にやってるな」


「あいかわらず、僕らのお姫様は気性の荒さが天下一品だねえ……」


「礼儀作法も女性としての所作も、母上に教わって完璧に身につけているはずなんですけど……刀を握ると人格が変わってしまうのは今も変わらないようですね」


 信がしみじみと呟く。


「文学にも武道にも秀でた子なのに、あの残虐さはどうにかならないんでしょうか」


 その呟きに、礼がわらった。


「だから、気に入らないんだよね」


 そして、つい、と兄を見た。


「ねえ兄上。あの夫婦、どうしたの?」


「お前にしては、つまらん質問をするな」


 それをきいて、礼は面白そうに笑った。


「そっか。殺したんだねえ……」

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