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「……お前は、なんだかんだと優しいふりをしているが、実は一番薔崋を嫌っているだろう」


 仁の言葉に、


「あれ? 嫌ってはいないよー? ……まあ、好いてもいないけどね」


 礼はおどけたように言って、けれど真意の読めない微笑をうかべた。


「僕はね、あの子の生き死にには興味がないんだ。殺されるなら殺されればいいし、生き延びるなら生き伸びればいい。……まあでも、確かに気に入らないところもあるよ」


 くつくつと、笑って、


「仁兄上より頭が良いところとか、刀の才とかね。末っ子なんだから兄をたてろよとか思ったりは、するわけだ」


そんなことを言う弟に、兄は小さく息を吐く。


「お前は本当にタチが悪い男だな」


「そう? 僕は、あの子が仁兄上の邪魔をしないなら、干渉する気はないよ。……でも、あの子が当主になりたいとかほざいたときは、――消すけどね?」


「……」


 長兄はやれやれといった様子でわずかに眉をしかめ、もう一度息を吐いた。


 礼はそんな兄を見て、にこっと笑う。


「でも、出来れば殺したくはないな。あの子は本当に母上に似ているからね。殺すのはしのびないじゃない」


「どちらにしろ、あの子を見ているわけではないんだろう。母上に似ていなければ、お前の関心はむかなかったんだろうからな」


「あー、まあ、そう言えばそうだね。まあ、細かいことはいいじゃない。薔崋は実際、母上似の美人になったわけだから」

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