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「ほら、もっと近くにおいで。顔を見せて。……ああ、やっぱり薔だ。なつかしいね」
にこにこしながら妹の顔を覗き込む礼に、
「礼」
鋭い刃のように、冷たい声が投げられた。
「少し黙っていろ。うるさい」
自分の言動が長兄を苛つかせているのは明らかなのに、次兄はへらへらと笑っている。
「あれ、兄上。ご機嫌ななめ? 妹の帰還なのに」
「お前は浮かれすぎなんだ」
弟を冷ややかに一瞥した後、仁は妹に向き直った。
「……薔。よく戻った。おかえり」
「はい」
「着いて早々で悪いが、お前にひとつ話がある。きくか?」
話という単語に、薔崋はぴくりと眉を動かした。
「……兄上の仰せのままに致します」
「そうか」
仁は頷いた。
「お前が家を出てから、七年経つな」
それは問いかけではなく、まるで叱責のような言葉だった。
「……はい」
薔崋は頷いた。声が少し震えた気がした。
「その間、お前は刀を手にして使用してはいなかっただろう?」
「はい」
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