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「――どう? 懐かしいだろ?」
振り向いた有李が言った。
「……――」
ただ目の前に立つだけで、飲み込まれそうな威圧感を放つ巨大な屋敷。
薔崋はうるさく鳴り続ける鼓動にかぶせるように一度深く息を吸って、静かに吐き出した。
「こっちだ」
有李は薔崋の前に立って、さっさと歩き出す。
薔崋が廊下を歩くと、すれ違う男たちは道をあけて立ち止まり、姿勢を低くして、薔崋が通りすぎるのを待った。
「この家は何も変わらない……この廊下も、覚えてる……」
歩みを進めるたび、呼吸をするたび、記憶のフタがひらく。ひらいて、中の記憶があふれだす。
「――……あぁ、賢姫じゃないか。ようやくお帰りか?」
ふいに、嫌みの含まれた皮肉げな声がした。
自分を賢姫と呼ぶ、笑み含んだ嫌味な声を、薔崋は一人しか知らない。
振り返ると、先ほど自分に刃を向けた、つり目の青年が立っていた。
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