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 有李は苦笑して、外を指差した。


「じゃあ、行こうか。外にクルマがある。ここは屋敷から遠くない土地だから、ひと眠りしてればすぐに着くだろ」


「……ええ、そうですね」


 外に出てみると、有李の言ったとおり、クルマが用意されていた。


 それに乗りこんで、薔崋は目を閉じる。眠るつもりがあったわけではない。


ただ、記憶に封じた道を見て、過去を鮮明に思いだすのを恐れていたからだ。


怖がりなところは、幼い頃から今までまったく変わっていないのだ。


怖がりなくせに、精一杯の虚勢をはって、強がるのが自分だった。


 勉強もそう。


 本当は、勉強なんて好きじゃない。


 それでも一生懸命に知識を吸収しようとしたのは、ただ、大人ばかりのセカイで、ちっぽけな自分がつぶされてしまうのを恐れたから。


 身の丈に不釣り合いな量の知識を持って、身の丈に不釣り合いな重さの刀を提げて。それは自分を守ってくれる術だった。


 闇は嫌いだった。


見通しが悪く、何が起こるかわからない。




 あの頃から自分は変わらず、夜は震えて眠るくせがある。

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