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「……じゃあ、行くか」
青年は薔崋に手を差し出す。
「修央令六くん。薔崋姫は俺がつれていくから、キミは先に戻ってていいよ」
青年が、黙ったまま薔崋を見つめている令六に言うと、令六は嘲笑うような笑みをうかべて頷いた。
「はいはい。じゃ、下のヤツラつれて先に戻る。まさかそいつが哀れになったからって、連れてトンズラしようとなんかすんなよ?
「するかよ、そんなこと」
「……少し、がっかりしたか?」
優しげな表情で、薔崋に尋ねた。
その表情があまりにも優しかったため、薔崋は少し驚いたが、すぐに首を振った。
「いいえ。いずれ来るべき日が、今日だったというだけです。……何も、がっかりするようなことはありません」
「……へえ」
「私は……私は、裏の世界で生まれた子どもです。裏で生まれた子どもが、表でいつまでも幸せに暮らすことなんて、できるはずがないんです。だから私は、ちっともがっかりなんてしていません」
有李の方を向くことなくそう言った薔崋に、有李はわずかに苦笑をうかべた。
「ばかだな……じゃあなんで、そんなに泣きそうな顔、してんだよ」
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