12

「抵抗するなら、暴れる気も起きないほどメチャクチャに感じる体にしてやってもいい。お前は少年の身なりをしていようと『女』だからな」


 奥方にそっくりな端正な顔をしている、と令六は言った。


「……なぜ、私を連れ戻しに来たんです」


 できもしないくせにそんな馬鹿馬鹿しい軽口をたたく目の前の男に静かに訊くと、彼は紛れもない嘲笑を浮かべた。


「お前が『女』だからだよ。一族にはお前しか『女』はいない。しかもお前は、本家の姫なのにどんな仕事にも使える。お前の父親――当主様はお前に興味がないから、どんなことに使おうともすぐに許可をくださる」


「ああ、なるほど……」


 その返答に、薔崋は僅かに目を伏せる。


「『女』にしかできない仕事の仕方があるだろ? 『女』だけが持ちえる武器が。使い勝手の良いコマなんだよ、お前は」


 なおも続くその冷たい言葉に、


「……そうですか」


 薔崋はこくりと頷いた。



 七年も経つというのに、何も変わってなどいないらしい。



 立ち上がり、ため息とともに刀をおさめた。





――長い長い、それでいて束の間の夢が終わり、冷たい現実に、目を覚ました。

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