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薔崋はその声に覚えがあった。
人を馬鹿にしたようなこの口調。冷めた声。
そして、皮肉のように賢姫(けんき)と呼ぶ、その憎たらしさ。
閉じられた記憶のフタが押し上げられる。
「……
薔崋のつぶやいた名前に、男は笑ったようだった。
口元を隠していた布をスルリと外し、
「さすが姫。記憶力のよろしいことで」
「……何を、しに来た」
吐き捨てるように呟いた薔崋に、彼は鼻で嗤った。
「何をしに、なんて、お前らしくない。愚問だ。本当にわからないわけじゃないだろ」
「……殺すなら、殺せば」
薔崋は言った。
口ではそう言ったが、令六にはそれができないことを薔崋は知っていた。
鋭く射抜いてくる薔崋を見て、令六はますますわらった。
「殺す? バカか、お前は。挑発のつもりか? 殺すわけないだろ。お前は、俺たちに大人しく連れて行かれればいいんだよ」
「……」
「生きていれば手段は選ばなくていいって話だが……」
令六は値踏みするように薔崋をながめる。
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