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青年は、
「けれど『貴女』は、もう子どもじゃない。そんな貴女をこのまま放っておくつもりはないんだ。とっとと連れ戻して来い、そう言われた」
陞葉の表情をまるで楽しんでいるように見つめてから、笑った。
「わかるだろ? たった八つでありながら書庫にある書を読破、吸収した、一族始まって以来の才媛と呼ばれた、貴女になら」
陞葉は――かつて
「……三人も男児を授かりながら、それでもまだ、利用する駒が足りないというのか……愚かな」
その呟きを聞いているのかいないのか、青年は言った。
「これは、要請なんてなまやさしいものじゃない。命令だ。もちろん、来るだろ? 薔崋姫」
「……」
幸せな毎日だった。
血のつながらない母と父。
貧しいながらも笑顔で生きる子どもたち。
毎日、教わって、学んだ。
生きるということ。笑うということ。
家族ということ。幸せということ。
「……」
失いたく、ない。
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