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「陞葉! 子どもたちが来てるよ!」
ふいに、家の外から母が自分を呼ぶ声が聞こえた。
陞葉(しょうよう)と呼ばれた少年は、ぱっと顔を上げて返事をする。
「はい! 母様!」
汗で湿った体を濡れた手ぬぐいでサッと拭いてから新しい着物に袖を通し、長い艶のある黒髪を背中で一つにまとめると、陞葉はいつものように外に出ていく。
家の外では母が汚れた着物を洗っているところだった。
「今日も人気者だねえ。相手してやんなさい」
「はい、行ってまいります」
にこりと笑んで母の前を通り過ぎると、近くの川べりで近隣の家から集まった子どもたちが遊んでいた。
「陞葉にいちゃん、今日はあっちであそぼう!」
「陞葉おにいちゃま、一緒に行ってもいーい?」
ここへ来る子どもたちは、男女混合、年も格好もばらばら。ただひとつ同じなのは、陞葉と遊びたい気持ちでいっぱいであること。
「もちろん。いきましょうか」
にっこりと微笑んで、陞葉はいつもの歩幅で子どもたちと一緒に歩き出した。
くちぐちに喋る子どもたち一人一人の言葉に頷きながら、陞葉は微笑む。
日々、繰り返される同じ光景。
日々、繰り返される同じ行動。
繰り返す毎日は、こんなにも満ち足りて幸せなのだと、思った。
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