第一章「陞葉-Syouyou」
1
「っ!!」
突然感じた恐怖に、少年は跳ね起きた。
「……は……」
汗がじっとりと体を湿らせていた。
体から体温が失われて、指先が冷えていく。
あがる息を整えながら、少年は周りを見回す。
「……は、あ……」
ゆっくりと慎重に視線を動かし、ここが見慣れた自分の部屋であることを確認すると、しだいに呼吸が落ち着き、冷えた指先に体温が戻りはじめた。
「……」
まただ。
またあの日の夢を見た。
もう何年も経つというのに、つい昨日のことのように、夢に見る。
生々しい体温と声、褪せない色。
少年は両目を手で覆い、深く深く息を吐いた。
「はは、うえ……――」
懐かしくあたたかい、いまなお記憶の中に生き続けるたった一人の名前を呼ぶと、胸の奥が小さく痛んだ。
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