第2話

今は6月、湿っぽい重みのある空気が身体にまとわりつくような、ジメジメとしたうざったさが嫌だ。



嫌だから、僕は今日もかったるい気分を紛らわすために昼休み、男子トイレの個室に閉じこもる。

便座にズボンを脱がずに座り、木村さんのタオルハンカチの匂いをひたすら嗅いで過ごす。


これは僕が彼女にバレないように、こっそりと奪ったもの。彼女の私物。今は僕のものだ。


ああ、癒される。

叶うはずない、どうしようもない乾いた恋心を甘く潤してくれる。

いつも昼休みになると嗅いでるはずの彼女の匂いはいつだって、僕には刺激が強く、下半身が疼いてくる。


呼吸が激しくなりそうなのを抑える。

個室に居ることは、誰にもバレないようにしないと。僕はタオルハンカチで口を抑えた。

口の中の唾液が少しねっとりしている。

きっと、今僕は気持ちよくなっている。


快感が迫ってきて。そして更に想像する。木村さんの穴に激しく出し入れして、最高な気分になるのを。




自身に触らずとも、この上ない強い快感により容易たやすく果ててしまい、僕は汚してしまった。


トイレットペーパーを少し伸ばして千切る。カラカラという音がなんだか、果ててしまった僕の虚しい気持ちと同じ感じがして軽く笑った。


ズボンとパンツを脱ぎ、自分の汚したそれを丁寧にペーパーで拭き取り、トイレに流した。


じゃー、という音。気持ちを切り替える音に思えた。

すっと流れていく紙をただ見ている。僕の激しく甘たるい恋愛感情と共に、トイレの穴の奥に消えていった。


まるで最初からなんにもなかったみたいに。

そう、木村さんに僕の気持ちは分からない。

知るはずもない、どうせ伝えられない。

だから初めから無いのと同じだ。

無かったことにしないと、この気持ちが周りに知れたら僕は変態扱いされてしまうだろう。


何でもないように、今日も僕はカースト底辺野郎として1日を過ごしていくしかない。

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