第7話
恥ずかしそうに頬を染める亀寿を抱き上げると、褥へと静かに下ろす。
そして邪魔だと思って懐剣を腰から引き抜き、武士の誇りであることを忘れて乱雑に床に置く。
そんな適当に扱ってはいけない、とでも言いたげにそれに伸ばされた亀寿の手を掴んだ。
「…いい」
いいんだ、そんなもの。
今は共に過ごすこの時間の方が大切だ。
座ったままの亀寿の打掛を脱がせると、誘われるようにその唇に己のものを寄せる。
そっと唇を離すと、目を潤ませた亀寿と視線が結ばる。
……私も、男だということだ。
惚れた女の表情ひとつでこんなにも、愚かなものに成り下がる。
「…久保様」
返事をする代わりに頬を優しく撫でると、この手にその細い手を添え、頬ずりをするようにして亀寿は小さく呟いた。
「私も…貴方様になにかあれば…迷わず後を追います。離れたくなどありませぬ…」
ほら、たった一言で。
こんなにも…幸せで堪らなくなる。
これを、人は恋と呼ぶのだな。
………忠堅。
「嬉しいと思っては…いけないのだろうが」
その頬を撫でながら、無意識に呟く。
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