第6話
だけど、確かにあるのだと今、実感している。
「…離してはならぬ。愛しい妻は、決して」
肩を抱き寄せたまま、その髪を撫でる。
いつからだろう。
こんなにも、愛おしくなってしまったのは。
「きっと…」
そっとこの胸に身を任せた亀寿が、ぽつりと呟くと。
「きっと忠堅様の奥方様は…半分は…跡を追う御覚悟だったのではないでしょうか…。勝ち目のない戦と知っていて…送り出されたのでしょうから…」
思いがけぬ言葉が聞こえて、顔を覗き込む。
そっとこの胸に頬を擦り寄せ、伏せたその目から涙がこぼれ落ちた。
「…わかる気がいたします…。私もこの温もりを…久保様を失ったら…生きていけませぬから…」
あぁ、もう。
愛おしくて、仕方がない。
そっと顎に手を添えると、ふい、と上を向かせる。
そしてその赤く色づく唇を奪った。
島津宗家の当主の道は、覇道の道。
それでも……愛に生きたい。
忠堅。
お前と同じ、妻に夢中な笑われる男になったのかもしれない。
私は。
それでも。
……………今、幸せだと思う。
心から。
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