第七章 二人が二人である意味【4日目】

第92話

1.淋しさに沈む朝










結局、眠れる訳もなく迎えた朝








隣りに蓮伽さんはいない








寝返りを打つと冷たいベッド







〈同じ家の中にいるのに物凄く遠いな・・・・今、何しているのかな・・〉












・・・・・・・・







・・・・・・・・






何となく勇気を出して、キッチンへ向かうと、鼻をくすぐるいい香りが残っている









リビングのテーブルに目をやれば、朝ごはんが用意されていた











静かに座り、黙々朝ごはんを食べ始めてみる







・・・・






蓮伽さんが作ってくれた美味しいはずの朝ごはん








「全然、味がしない・・・蓮伽さんの作ってくれた朝ごはんなのに、美味しいはずなのにな・・・」






・・・・・






・・・・・






こんなに淋しく感じるなんて・・・






また、涙がこぼれる








俺、しょーもな。と思った






蓮伽さんはとても疲れていても、いつも人の事が優先だ。






きっと泣きたい夜もたくさんあるはず





それでも、誰かの為に優しく微笑み、誰かの為には涙を流す









・・・・・僕の役目は?




僕は何のために蓮伽さんと出逢った?



蓮伽さんのために何ができる?








いつも欲しがるだけで、蓮伽さんの為に与えてきたことはあったのか?







・・・・・




・・・・・





僕が蓮伽さんと出逢い一緒にいる事の意味・・・








それは、蓮伽さんに惜しみない愛を与えるため、生まれ、出逢った・・・







【・・・・舞翔、聞こえますか?】






・・・・・・





れんな様の声が聞こえた






【・・・はい、聞こえます。】





【舞翔、わかりましたか?あなたが蓮伽と一緒にいる事の意味を。】





【・・・・はい、今まではわかった風だったのかもしれません。愛し合っていればいいと、ただそれだけを望んだのかもしれない・・・】



【そうですね・・・僕は愛しすぎて、愛情を図ってしまった順番で・・しかも負けたくない相手はリョウちゃんだった。】



【最初から、勝てない相手ですよ(笑)わかりますか?】



【そうですね、蓮伽さんはそういう人です。】



【だけでは、ありません。女性は母になると皆、そうなのです】





「・・・・・母は、母はそうではありませんでした。僕をおいて、居なくなった」






【舞翔、辛く悲しい思いをしたのですね・・・蓮伽は違いますよ。皆を慈しみ、自分の子どもを深く愛し、かけがえのない相手にあなたを選んだ。】





「れんな様・・・」




【そして、わかっていますか?あのが必要としている愛は舞翔、あなたの愛だけですよ。あなたしかこの世であのを愛で満たす事はできないのです。

蓮伽の蓮の花はあなただけのものなのです。自信を持ちなさい、舞翔】





・・・・・・






・・・・・・






・・・・そんな大切な事に僕は気づかず、自分の事ばっかり、だったんだ。






「僕は未熟でした、自分の事ばかりで・・・・」





【もう、大丈夫ですね・・・!双子達を後で引き取りに参ります。その後は、蓮伽を存分に愛でてやってください。そして、大切に宝物のように慈しみなさい。もう少しだけ、私も、龍神様に愛でて頂きたいので・・・すまぬ♡】






「・・・あっ!」







・・・・・そういうと、れんな様の恥ずかしそうな笑い声が小さくなっていった






・・・・・





女性は愛でることが何より大切なのだな・・・・しみじみ学んだ






(特に、龍神様の家系はそうなのかもしれない。)







と、思う







・・・・・蓮伽さんの顔が見たい

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