第73話

14.悪人は誰?





「稲垣・・・・あなた、香取と付き合っているの・・・・?」






中居さんが力ない声で声を掛ける






「え?そんな事ないですよ!私が、中居さんの嫌がる事をする訳ないじゃないですかぁ~・・・!ヘヘッ」







稲垣さんはヘラっと、笑って見せた












【・・・・・パチーンっ!!!!!!】










静寂を掻き分けるように肌を叩く音が響いた








「中、中居さん!!」







「しっかりして!!稲垣っ!!薬、いつから吸ってるの!!」


「ヘヘッ、いつからって・・・薬なんでやっていないですよ?・・・中居さん、痛いじゃないですか・・・」





情緒が不安定だ








「・・・・・稲垣・・・・」





中居さんが崩れ落ちた









蓮伽さんは、中居さんを支え椅子に座らせた






「中居さん、しっかりしてください!あなたが蒔いた種、あなたの手で終わらせるんです!」







・・・・・・・・・・・










・・・・・・・・・・・









何となくざわつく中、僕らはコテージへと戻った








・・・・・・・・・・








稲垣さんは、まだフワッとした感じだが、少し素に戻ったようだった






「稲垣さん、少し正気が戻ってきたかしら?」









「・・・・・・すいません」








「稲垣、事情を説明してちょ、、、、」







「中居さん、まぁ、一回落ち着きましょうかね、

稲垣さん、外のお風呂入ってきたらどうですか?汗かいて、まず抜きましょう、薬」







蓮伽さんはそう言って外に出ていった







目で追っていくと、何やら不思議な動き







湯船に、何か入れている






僕も思わず外に出た






「蓮伽さん!」









手を湯船に入れ、何やらブツブツ言って目を閉じている










―――――――――――その蓮伽さんはとても神々しかった


済みきった空気に包まれて、彼女の手は金色こんじきに輝いたものを手から湯船に移すように注ぎ込んでいた







〈何か注ぎ込んでいるぞ、何だあの優しい光・・・〉







何が終わったようなので、近づいてみた








「蓮伽、、、、さん?」



「あのね、コソコソ・・・ヒソヒソ・・・」



「そうなの?!すごいなー・・・・」



「我が家の門外不出の商売道具、・・・秘伝のものだよ」



「効果はどんな・・・・・」



「薬・・・・・・抜いて、正常にだいぶ戻せるの(笑)」



「す、すげー・・・・、俺、成分調べたいんだけど!」



「ふふっ、ダメ(笑)秘薬なの、それに・・・」



「それに?」


「深澤くんだったら、解き明かしてしまうから(笑)」


「うーっ!調べたいっ!」







〈必ず、そのうち調べてやる・・・〉






「深澤くん、稲垣さん連れて来てくれる?」








軽くうなずくと稲垣さんの所へむかった








中では、中居さんは静かに泣き、稲垣さんは中居さんを絶望の中で見つめていた






・・・・・冬の張りガラスのように張り詰めた冷たい空気、二人とも触れたら割れてしまいそうだ







・・・・・・足を止めてしまった、入りづらい






「何してるの(笑)」







躊躇なく、蓮伽さんは入った








「稲垣さん、お風呂準備が出来たの、さ、入って」







正気に戻りつつあるようだ、躊躇が見える





「あ、あの・・・・ゲストのみなさんのお風呂に入るのは・・・」


「何言ってるの、後でまた清掃が入るのだから大丈夫よ(笑)さ、入って」






蓮伽さんは稲垣さんをお風呂へと連れて行った








〈この行動力・・・、さすがとしか言えない・・・・〉








「中居さん、大丈夫ですか?」







蓮伽さんが戻って来て、ソファに腰かけた










物凄い勢いでピッチャーについである水を飲んでいる







「お疲れ様です」






「力を使うと水分取られるのよね(笑)補給、補給」






中居さんも落ち着いてきたようだ







「稲垣は?」








「今、お風呂へ、薬、抜いてもらっています」



「・・・・」



「中居さん、あなたは抜かなくて平気ですか??」





「?!」




僕は思わず、彼女を見た




〈中居さんも薬?〉






「大丈夫、今はやっていないから」


「そうですか?ほんの少し中居さんから感じますけど。」


「・・・・怖いわ、岩本さんは(笑)なんでも見透かされてしまう感覚」


「すいません、職業柄、です(笑)」


「・・・・大丈夫、ほんのちょっと使う時間があるだけだから」





蓮伽さんは微笑みつつ畳みかける







「・・・・中居さん、ジャンキーですよね?実は常習者。香取さんと付き合っている時から使っている。ただ、常にじゃなくて交わる時のみに使っている」




「・・・・もうかなわないわ、岩本さん」



「いえ、別に当人たちでプレイで使うのはいいと思います、バレないでねーって事だけで。でも、今回の稲垣さんの件はそんな簡単ではないので」



「そうね、稲垣を利用するとは。香取、許さない。」



「許さないって、”許せない”が普通ですよね?」








・・・・・何か、スッキリしない

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